2013/01/01

2012. 年間ベスト・アルバム 40+10 [40位-21位]

1/01/2013
前回の続き。40位から21位まで。


40. Taylor Swift / RED [Big Machine]

ピザと一緒に注文出来るテイラー・スウィフトの話題盤。聴く前は年間ベスト候補だったんですけど、この作品は前作にあった"Spaks Fly"や"Better Than Revenge"みたいなコテコテのスタジアム・ロックな曲が無い所に物足りなさを感じて結局この位置に。とはいえダンス・ミュージック調な曲を取り入れたこと自体はティーンに絶大な支持を受ける彼女にとっては必然とも思えるし、邦題『 私たち絶対に絶対にヨリを戻したりしない』は耳に残るナイスポップで気に入っている。他にもギャリー・ライトボディやエド・シーランとのデュエットなどもあってなんだかんだ楽しめました。ところで、テイラー嬢の"運命の人"探しと称した歌ネタ探しはいつまで続くのでしょーか。

Taylor Swift - Starlight


39. Alcest / 『Les Voyages de l'âme』 [Prophecy] 

Alcest_Les Voyages de l'me
Les Voyages de L'Âme
2012年で最初に買った1枚がコチラ、フランスのNaigeによるポスト・ブラックメタルプロジェクトの3作目。この作品は前作よりブラック色が薄れており、デスメタルやブラックメタル特有のシャウト(デスボイスと私は呼んでいる)も殆ど無くなっています。なので、まあその界隈の人には物足りないかもしれませんが、私みたいなブラックメタルを殆ど聴かない人間にとっては、適度な刺激があるポスト・ロックやシューゲイザーとしてちょうど良い按配なのでした。幻想的で美しいメロディーとNaigeの優しい声に魅了される良作。

Alcest - Autre Temps


38. Mala / Mala In Cuba [Brownswood]

Mala in Cuba
Digital Mystikzの片割れでDeep Mediを主宰するMalaさんが、年がら年中激押しや太鼓判を押してばかりな気がするGilles Petersonの手によって、キューバの首都ハバナへと送り込まれ制作したというダブステップmeetsキューバ音楽な作品。ドラゴン村上の映画『KYOKO』(KYOKONではない)も見ていないしキューバ音楽というものを聴いたことがないので、いまいちピンと来ないところもあるんですけれども、"Tribal", "The Tunnel", "Ghost", "Celle F"なんかはかっこ良くて気に入っている。まあちょっと綺麗にまとめようとしすぎている様な印象があって、そこに若干の物足りなさは感じるんですけど、それでもやはりよい作品だと思います。

Mala - Ghost


37. Delilah / From The Roots Up [Atlantic]

From the Roots Up
ダブステップ世代のUKシンガーソングライター、Delilah(デライラ)ことPaloma Ayana Stoeckerさん23歳のデビューアルバム。LVなどを共同プロデューサーに迎えて制作された本作は、トリップ・ホップを思わせるアンビエント・ソウル的な仕上がりで、彼女の主張してくる歌声も含めてなかなかの良盤でした。中でもミニー・リパートンのカバーは出色でしょう。今年もジェシー・ウェア、ラナ・デル・レイ、ティナーシェイなど魅力的な女性シンガーの登場に心が踊ったけれど、もっともライブ映えするのはこの人なんじゃないかなあ…という気がする。事前に出たEP『2-4am』はフリーDLなので是非どーぞ。

Delilah - Inside My Love


36. Sigha / Living With Ghosts [Hotflush]

Living With Ghosts
Hotflushで4つ打ちをやっている変わり種、Sighaのデビューアルバム。まず日本人としましては、ジャケットのおっぱい、ではなく最終トラックの"Aokigahara"に目を奪われる。なぜ青木ケ原樹海を題材にしようとしたのか…。まあそれは置いといて、基本的にはダークで硬質なテクノなのですが、合間に入るドローンやアンビエントトラックがよいアクセントになっており、"Suspention"からの"Dressing for Pleasure (Ideal)"への流れは至福の瞬間です。自然と繋がっている構成も相まってなかなか中毒度が高い。HotflushのYoutubeチャンネルで全曲試聴可。


Sigha - Dressing for Pleasure (Ideal)


35. Delano Smith / An Odyssey [Sushitech]

AN ODYSSEY
活動歴は70年代から、というデトロイト最後の大物らしいDelano Smithさん49歳の1stアルバムは、ベルリンのレーベルSushitechから。こういう大ベテランの作品というのは、得てしてスタンダードかつ洗練されているもので、まあ正直なところ最初は「なんか地味だなー長尺多いし」程度の認識で、あんまり聴く気が起きなかったんですけども、聴くたびに良さが分かってきました。メインアクトの前に場を作る渋い職人的DJの様に、淡々としつつも、しっとりとした微熱感を保ち続ける保湿成分配合の大人なディープハウス。リミックスカットも出ているのでそちらも聴いてみたい。

Delano Smith - Midnight Hours


34. First Aid Kit / The Lion's Roar [Wichita]

The Lion's Roar
スウェーデンのソダーバーグ姉妹によるカントリー/フォーク・デュオ、First Aid Kitの2ndアルバム。Klalaの素直な歌声は凛とした強さを感じさせ、それを支えるビジュアル担当のお姉さんJohannaのコーラスも魅力的です。お父さんがプロデュースした前作はいくつかいい曲は有ったものの、正直言って平凡だったのですが、本作は深みを増したプロダクションに、分かりやすいポップさを兼ね備えた素晴らしい出来で本当によく聴きました。しかしあの幼かった2人がこんなに成長するとは…。私は、もう、駄目かもしれない…。

First Aid Kit - Emmylou


33. Evian Christ / Kings And Them [Tri Angle]

Kings and Them(FreeDL)
Tri Angle一派なUKの新鋭、Evian Christのミックステープ。ミネラルウォーター風の名前に反してダークな作品で、沈み込む重いベース音が印象的なアンビエント・ヒップホップ。とまあ最近よくある音ですけど、かなりヒップホップ寄りなところがこの人の特徴でしょうか。重たいけれどスムージーな作風で、重厚で大袈裟すぎるキライのあったClams Casino / Instrumental Mixtape2よりもこなれた感触があり、リリース後しばらくしてから魅力に気がついてよく聴きました。フリーDL。

Evian Christ - MYD


32. Lil B "The Based God" / Faces of Lil B Vol.2: Based God Is Eternal [Mishka]

Based God Is Eternal
今年は一体何作のミックステープをリリースしたのやら…な、世界一多作なラッパー、Lil B "The Based God"のMishkaから出たベスト盤5部作のその2。まあベストってどうなのか…とは思わなくもないのだけど、この人、じゃなくて神さまくらい多作大作駄作で混沌としていると、こういう企画はとてもありがたいのです。今年のミックステープでは『God's Father』がよかったんですが、2時間もあるのでコンパクトにまとまった本作をより愛聴しました。Clams Casinoプロデュースの"I'm God"、堂々と某豪華客船のアレを使用している"3 Stacks"など聴き応えあり。フリーDL。





31. Andy Stott / Luxury Problems [Modern Love]

Luxury Problems
ホントはトップ5とかに入れてナウいフリしたいAndy Stottの最新作。話題のOPトラック"Numb"はターチターチとMr. Terchの名前を連呼していてヘッドホンスレ住人としては歓喜なんですが、オペラ調のボーカルが支配する"Lost and Found"といい、なんだか格調高くて凄いなとは思うものの、最初の2曲はいまいち良さが判らず。でも3曲目のSleepless以降はとても気に入っていて、中でも表題曲"Luxury Problems"と"Leaving"に関しては昨年の『Passed Me By/We Stay Together』とは異なる素晴らしさを感じました。ちなみに、Andyさんは本作のシーンを超越した成功でようやく音楽一本で生活していく事が出来る様になったのだとか。

Andy Stott - Leaving


30. Dean Blunt and Inga Copeland / Black Is Beautiful [Hyperdub]

Black Is Beautiful
かつてHype Williamsを名乗っていた怪しい男女2人組、Dean Blunt and Inga Copelandの1stフルレングス。ジャケットからして意味不明なのですが、音の方は更に訳がわからなく、煙たいとかスモーキーなどと形容される彼らに煙に巻かれている気分になる。歌ものに関してはInga Copelandの可愛らしい声の魅力もあってすんなり聴けるものの、インストものはさっぱり理解出来ず「なんだこれ」と繰り返しているうちに癖になってきます。訳はわからなくともキャッチーなので気分よくなれる作品だけど、あんまり聴いているところを人に見られたくはないかなあ…。


Dean Blunt and Inga Copeland - 9


29. Chairlift / Something [Columbia / Young Turks]

Something
ブルックリンの男女デュオ、Chairliftの4年ぶりとなった2nd。前作はipod nanoのCMに採用された"Bruises"が話題でしたが、今作では"I Belong in Your Arms"の日本語版(これの為にわざわざMVまで作るとは…)が、文系美女キャロライン・ポラチェック嬢の腋毛効果も相まって話題となりました。なんだか話がワキに逸れた気もしますが、プロデューサーにDan CareyとAlan Moulderを迎えただけの事はあって前作より遥かに洗練されているし、キャロラインのボーカルも表現力が増して(ライブではアレだけど…)明瞭快活なシンセ・ポップに仕上がっている。上半期によく聴いた1枚です。

Chairlift - I Belong in Your Arms


28. Vessel / Order Of Noise [Tri Angle]

Order of Noise
Left BlankなどからシングルをリリースしていたVesselの1stフルアルバム。いままで聴きにくい作風の人だなあ…と思ってたんですが、Tri Angleらしいボーカルサンプルやウィッチハウス風味が効いたのか、これまでの作品より大分キャッチーなのですんなり入れます。唐突に入るノイズや意味不明なシンセが荒唐無稽なところを見せてはいるものの、"Silten"から"Lache"の流れは素晴らしく、本作のハイライトでしょう。終盤のゴスな空間に軽妙なシンセベースが踊る"Court of Lions"もよいし、難解なところはなく単純にかっこいい作品です。…すくなくとも聴いている間は。不思議なことに聴き終えた後で印象に残らないんですよね。これが無ければベスト10入れてたかも。

Vessel - Lache


27. Tinashe / In Case We Die [Self-Released]

In Case We Die(Free DL)
19歳の新世代R&Bな女性シンガー、Tinasheの1stミックステープ。The Weekndの様なダーク・アンビエント風味のトラックと、彼女の儚げなボーカルの組み合わせは陶酔感にあふれており聴き心地がよい。The Weekndの中の人Abel Tesfayeみたいに犯罪者ヅラしていないし、かわいくて、もう言う事ないですね。最近リリースされた2ndミックステープ『Reverie』も素晴らしかったけれど、ちょっと過剰気味なプロダクションの曲が増えているので、より落ち着いた感触のこちらのほうが私は好き。まあ両方夢見心地になれる傑作ですよ。

Tinashe - Let You Love Me


26. Alex Winston / King Con [V2 Coop]

King Con
ミシガン出身で現在はロンドンを拠点とする25歳のマルチ奏者にしてシンガーソングライター、Alex Winstonのデビューアルバム。なんかすぐ飽きそうだなと思ってたんですが、意外なことに飽きなかったので、これはひょっとして2012年の隠れた名盤なのでは…と思うに至り、私の中で評価が高い作品。オペラを習った後に開眼したらしい彼女の独特でコケティッシュな歌唱法と、レトロだけど今っぽくも感じられるオルタナティブ・ポップな作風は相性がよくて気に入っている。まあちょっと人は選ぶかもしれないけれど、閉塞的なベッドルーム・ポップとは違った力強さに惹かれます。

Alex Winston - Locomotive


25. The xx / Coexist [Young Turks]

Coexist
UKの3人組、The xxの2nd。リリース前に来日ライブへ行ったこともあり一聴した時は「わー地味なにこれ」という印象もあったものの、全11曲37分と短いので繰り返し聴いているうちに洗脳されてしまった。ライブでは確かに感じられたハズの起伏がなさ過ぎるのはどうなのか、とは思うけれどこれはこれでアリでしょう(ファンなので) まあ欲を言えば"Teardrops"が好きなので、こういったカバーなんかも聴きたかったところ。


The xx - Sunset


24. The Killers / Battle Born [Island]

Battle Born
傑作だった前作『Day & Age』のオープニングトラック"Lousing Touch"の綺麗なイントロと異なり、ペッポッペッポッとチープな始まり方に一瞬不安を覚えたけれど、聴いてみたらキラーズ全部入りの良作でした。彼らにはこの調子でベタベタなポップ・ロック道を貫いて頂きたいものです。それからブランドン・フラワーズのよく通る声って凄く好きなんだけど、ちょっと一本調子な所が難点だと思ってるんですが、本作では"Deadlines and Commitments"の様なしっとりとした歌を破綻なく聴かせていて、すこし成長した様子が感じられた。まあそんな事はさておき、そろそろ日本に来てくださいませんか。

The Killers - Runnaways


23. Purity Ring / Shrines [4AD]

Shrines
2012年は注目されまくりでフジロックにも出演したCollin RoddickとMegan Jamesによるカナダのドリームポップデュオ、Purity Ringのデビューアルバム。Tri Angleやクラウドラップ界隈の影響が強いと思われる、ダークで浮遊感のあるトラックに、ミーガンのお花畑的なロリボーカルの組み合わせが素敵。まあこのアルバム自体は既発曲が多いし、音色のパターンが一緒といった不満点もあり、今ではちょっと飽き気味なのですが、中には"Saltkin"の様に洗練されたトラックもあって楽しめたし、やっぱり2012年を代表する1枚と言ってよいんじゃないかしら。

Purity Ring - Saltkin


22. Shed / The Killer [50 Weapons]

The Killer
ベルリンのレコードショップHard Waxで働くOstgut Ton一派、Rene PawlowitzによるShed名義の3rdアルバム。妙に圧迫感のあるジャケットですが、前半はこのイメージまんまで、地を震わせる強烈な低音にうっすらと流麗なシンセが被せられた"Silent Witness", "I Come by Night", "Day After"は迫力がある。これが中盤の"Phototype"辺りからうっすらしていたSHEDの文字がくっきりしてくるかの様に、ウワモノのシンセが存在感を増して、低音は徐々に後退していき、最終トラック"Follow the Leader"では夜明けを感じさせる美麗なピアノのメロディーに支配されます。パーティでの一夜を体験させる様なアルバム構成と、レイブ的な音をふんだんに使った本作はキラートラック満載で素晴らしいのだけど、個人的にはそこまでハマらなかったかな。

Shed - Phototype


21. John Talabot / Fin [Permanent Vacation]

Fin
バルセロナのニューディスコなプロデューサー、Oriol RiverolaによるJohn Talabotの1stフルアルバム。いまこうして聴いていても、何でよいと感じるのかよく分からない作品なので、なんとなく20位内に入れたくなくてこの位置に。アルバムを覆うメランコリックでスローテンポな雰囲気であったり、チルウェイヴと共振する様な逃避的な音に惹かれたのだとは思うのだけど。でもLoneは駄目だったのに、何でこっちは好きなのかはやっぱりわからず終い。まあ好きなものは好きだからしょうがない。…か、書くのが面倒になってきたから手抜きした訳じゃないんだからね!

John Talabot - Oro Y Sangre




 
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