2012/01/10

2011.年間ベストアルバム40+10 [20位~1位]

1/10/2012
前回の続き。20位から1位まで。

20. Sepalcure / Sepalcure [Hotflush]

元Merckと元Neo Ouijaの2人!Travis Stewert (Machinedrum)と、Praveen Sharma (Praveen, Braille)によるユニット、Sepalcureの1st。ソウルフルなボーカルネタが乗っかったポストダブステップ的な音で、最近で言うところのFuture Garageに当てはまるのかもしれません。リズムトラックは『Room(s)』譲りのキレだけど、BPMが抑え気味で聴きやすく、ダブステップからエレクトロニカ好きな人まで聴ける間口の広い作品になっている。正直なところEPの方が面白かったとは思うけど、結構聴いてるのに飽きないところが気に入ってます。

Sepalcure - Me


19. Tim Hecker / Ravedeath, 1972 [Kranky]

モントリオール在住のサウンド・デザイナー、Tim Heckerの8枚目となる作品。アイスランドはレイキャビクの教会で収録を行ったそうで、場所の影響もあるのか、寒々しく閉塞的で、恐怖すら感じる。とはいえパイプオルガンの荘厳な響きと、あまりガツガツしていないノイズのお陰で聴きやすくもあり、美しく素晴らしい作品に仕上がっている。この人の作品買ったのは1st『Haunt Me, Haunt Me Do It Again』以来だけど、評判の良さに釣られて聴いたら大正解。ひんやりした気分になりたい時は、Monolakeの『Gobi the Desert』とコレがあればもう困らなそうな1枚です。
Tim Hecker - The Piano Drop


18. Kuedo / Severant [Planet Mu]

ダブステップ・デュオVex'dの1人、Jamie TeasdaleのKuedo名義での1stフル。80年代的な壮大で煌びやかなシンセサウンドの裏では、ジュークから民族的なものまで多彩なビートが鳴っていて、それは未来の大都市の眩いネオンの煌きと、酸性雨の降る無国籍で混沌とした街というブレードランナー的世界を思わせる。(まあ、"Flight Path"なんてまんまブレランのEDタイトル曲ですしおすし)一聴では美麗なウワモノに耳が行き過ぎてしまうかもしれないけど、何度も聴いているうちに緻密に打ち込まれたリズムトラックと完全に融合して、聴く程に気持ちよくなってくる味わい深い作品。



17. BNJMN / Black Square [Rush Hour]

イギリス南西部ボーンマス在住のBen Thomas、ボーンマスのベン・トーマス…そんな覚えやすい名前な彼のプロジェクトBNJMNの今年2枚目となる2ndアルバム。一言で言うとこれはよいテクノ!なんだけど、音の重ね方にIDM~エレクトロニカ的なものを感じるし、ポコポコシャコシャコした様なリズム音をよく使っていたり、音の良さなんかも特徴でしょうか。意図的だったのかもしれないけれど、どこか機械的な印象も受けた1stと比べると、自然だし随分洗練された様に思う。曲も粒ぞろいで文句なしの傑作。
BNJMN - Keep The Power Out


16. WU LYF / Go Tell Fire to the Mountain [LYF]

謎の覆面集団などと言われ話題となっていたマンチェスターのオンボロ教会を拠点とする4人組、WU LYF(World Unite Lucifer Youth Foundation)のデビュー作。パイプオルガンの音色、メランコリックでどこかポストロック風なサウンドに、ガラガラ声で何言ってんだかわかんないボーカルが個性的。そんな彼等の歌からは、切実な怒りや嘆きが伝わってくる…様な気がする。こういうエモーショナルなものは好きです。ただ、ちょっと作風が一本調子な感もあって、真価を問われるのは次回作になるのかなって事でやや前途不安な若者。

WU LYF - Dirt


15. Boxcutter / The Dissolve [Planet Mu]

BoxcutterことBarry Lynnの4作目。今作では自身のギターを始め生音を多く取り入れ、トロピカルだったりオリエンタルだったりで独特なIDM/ファンクサウンドを展開。その結果、ダブステップや巷で言われるポスト・ダブステップともなんだか違うシロモノに。スローテンポでリスニング志向ゆえの地味さはあるものの、艶かしく洗練されたトラックは不思議な魅力があってよく聴きました。『Back And 4TH』"LOADTIME"や『[unclassfied]の"Waiting For Lights"も素晴らしかったし、今後も目が離せない人。


Boxcutter -Passerby


14. DJ Diamond / Flight Muzik [Planet Mu]

これを買ったのはPlanet Muからのリリースという事、Machinedrumの影響、そしてアートワークから漂う異質な雰囲気に惹かれたからなんですけど、3分に満たないトラックが畳み掛ける様に迫ってきて、多彩というか混沌というかその密度の高さに圧倒されてしまいました。
ボイスチョッピングが印象的な#1,#2で幕を開け、唐突にアーバンな雰囲気漂う#3,#4におや?となっているとFF8の戦闘曲が鳴り響き、後半へ入るとベースが一気に暴力的な響きを伴ってきて、今作のベストトラック"Snare Fanfare"を聴く頃には、このアルバムは傑作だと多くの人が確信出来ると思う。テクノ寄りで聴きやすいのもポイント。

DJ Diamond - Rep Yo Clique (Remix)


13. James Blake / James Blake [Atlas]

2011年の顔の1人、James Blakeの1st。このアルバム曲単位では中毒性があるんだけど、通しで聴くと途中でちょっと飽きてしまうな…というのが正直な感想。でも、ほぼスルーしていたダブステップやダブステップ通過後のシーンに目を向かせてくれた1枚だし、"The Wilhelm Scream"は掛け値なしに素晴らしいし、見た目も優しそうな好青年でよいし…という訳で選ばない訳にはいかないかなと。某所で聴いたライブ音源が凄かったので、今度来日する時はライブ行ってみたいです。


James Blake - The Wilhelm Scream


12. The Weeknd / Thursday [Self-Released]

たった1本のフリーMixtape『House Of Balloons』が世界中で話題になったカナダ発のR&Bプロジェクト、The Weekndの2ndミックステープ。インパクト、という点ではダブステップ通過後のR&Bみたいな音を示した迫力のある1stなんですけど、より落ち着いた感じの『Thursday』を好んで聴きました。Drakeをフィーチャーした"The Zone"、人の泣き声で始まり鳥の鳴き声で終わる"The Birds Part 2"、8分02秒の大作"The Gone"が特に気に入ってます。FreeDLなので、ありがたくダウンロードさせて貰いましょう。とか書いてたら3作目『Echos Of Silence』が公開されてました。
 


11. The Field / Looping State of Mind [Kompakt]

バンド編成で奏でるテクノサウンドにシューゲイズな味付けのAxel Willnerによるソロプロジェクト、The Fieldの3作目。1曲が7分以上と長く、タイトル通りループが基本で5分以上同じ展開が続いたりするんですけど、ミニマルテクノという言葉から連想されるソレとはまた違って、反復が続きながらも機械的な感じが無いと言うか…暖かみのある昂揚感を感じるんですよね。何処かで読んだレビューに「螺旋を上昇していく感覚」みたいな事が書いてあって、なるほど上手いこと言うなと感心した記憶があります。


The Field - It's Up There


10. Tropics / Parodia Flare [Planet Mu]

UK在住弱冠22歳のマルチ・インストゥルメンタリスト、Chris WardによるTropicsの1stは、ちょっとポップなアンビエント+チルウェーブ。
シーンの外側からチルウェーブに接近した…という事になるんでしょうかね。この夢見心地な気持ちよさは現実逃避的ではあるんだけど、チルウェーブに漂う密室感とは無縁の静謐な開放感に満たされている所が好印象。胡散臭い風貌の男2人がひたすら渋谷~原宿~新宿の街を走る"Mouves"のPVもよいです。Keep Shelly In AthensやらNot Not Fun周辺で知られるItalと、USインディー方面へのアプローチとも取れるリリースが続くけど、Planet Muらしい少しズレた作品を期待したい所。

Tropics - Mouves


09. Memory Tapes / Player Piano [Carpark]

Memory Casette、Wired Tapesなど、似たような名前を複数使い分けてきたDayve HawksによるMemory Tapesの2ndは、なにやら脱チルウェ-ブして明るい軽やかポップスに。本人にとっては以前やってたバンド的な音に回帰しただけなんだろうけど、チルウェーブって何でしたっけ?とでも言う様な突き抜けっぷりに好感持ちました。平面的なバンドサウンドと、Dayveのヒョロっとしたボーカルにベタベタなシンセが絡むと、なんだか安っぽいのに気持ちよくて変な中毒性があってよく聴いた作品。しかし何でこの名義でコレを出したのか…。

Memory Tapes - Today Is Our Life

08. SBTRKT / SBTRKT [Young Turks]

謎の覆面プロデューサーことSBTRKTの1st。ダブステッププロデューサーと呼ばれる人の作品でも、これだけ聴きやすいものは中々ない気がします。この作品はダブステップというよりもファンク、ジャズ等の要素を持つベース・ミュージックといった所だけど、ファンキーでオサレで誰でも親しみやすい所が素晴らしいなと。Little DragonのYukimi Naganoをフィーチャーした"Wildfire"は、上品なやり方でポップシーンへも訴求するお手本の様なナイストラックだし、"Ready Set Loop"の様に知的なフロアトラックもあって懐の広さも感じさせます。

SBTRKT - Wildfire


07. Death In Vegas / Trans-Love Energies [Portobello]

アメリカで大分苦労したらしいリチャード・フィアレスによるDeath In Vegasの7年ぶりとなる作品。アルバム全体に漂うダウンテンポで哀愁ただよう作風が苦労を忍ばせる。今作では初挑戦という自らのボーカルがメインとなっていて、これが控えめながらもエモーショナルでアルバムの雰囲気にあってるんですよね。アメリカで弾く様になったというギター1本担いで、ボロボロになりながらもその先の光を信じて帰郷する…みたいなジャケットも泣けます。最終トラック"Savage Love"は、ドラマティックな展開で今までにないカタルシスを感じました。

Death In Vegas - Savege Love


06. Martyn / Ghost People [Brainfeeder]

PSVでお馴染みアイントホーフェン出身、現ワシントンD.C.在住のMartijn Deykers aka Martynの2ndアルバム。ベタベタな4つ打ちでフロア向けになりましたけど、この路線の方が好みです。本人もこういうの聴いてきたから自然とこうなったみたいな事言ってて、こなれた感じする。デトロイトで気分はBack to 90'sな最終トラック、"We Are You In The Future"は2011年屈指の超力作で、その力技感溢れるドラマティックな構成は感動モノ。

 
Martyn - We Are You In The Future


05. Space Dimension Controller / The Pathway To Tiraquon6 [R&S]

テクノ界の新鋭Jack HamillによるSpace Dimension Controllerの47分に及ぶ長編EP。7-80年代風SF世界が広がるスペーシーな作品。過去作より硬質になってちょっと取っ付きにくくなったかもですが、完成度が高いと思います。この作品にはMax TiraquonとMr. 8040のなんというかワイド・スクリーン・バロック的というか、コミック的というか…まあそんな壮大なSF設定があって、来年発売される"Welcome To Mikrosector-50”の前編なのだとか。こういうのも90年代的で、そういう流れが来てるのかしらという感じがします。



Space Dimension Controller - Flight Of The Escape Vessels


04. Machinedrum / Room(s) [Planet Mu]

Travis StewartによるMachinedrum名義の最新作がPlanet Muからって所でまず驚きでした。Merckでアブストラクト・ヒップホップやってた頃の彼の作品は神経質な感じでどうも苦手だったんですけども、Room(s)では開き直ったかの様に開放的なノリで、これまでよりも随分聴きやすくなったと思う。"Sacred Frequency"や"GBYE"といったキレたJukeトラックばかりでなく、"Lay Me Down"の様に落ち着いたR&Bトラックまで楽しめる。余程ベース・ミュージックが肌に合ったんでしょうかね。最高傑作!


Machinedrum - Sacred Frequency


03. Sandwell District / Feed Forward(配信版)[Sandwell District]

"Falling the Same Way"を聴いた次点で完全にヤラれました。ハードで無機質、さりげない美メロ、そして響く音響が痺れる様なカッコいい空間を創りだしている。ノイジーでハードな音が7分続いた後の幽玄的なシンセが開放感を誘う"Immolare"、響く低音と壮大なストリングスが絡む"Gray Cut Out"、どれも新しい所は無いのに、未来を感じる(まあ本来テクノってそういうものなんでしょうけど)。それにしても、こんなに格好良いミニマル・テクノってそうそう無いんじゃないかな。ecrn上半期アワードで、複数の方が推薦してくれたお陰で聴きました。ありがとうございます!しかしアナログ盤どっかで売ってないかな。

Sandwell District - Falling the Same Way


02. Floating Points / Shadows [Eglo]

Floating PointsことSam Shepherdによる最新作。EPだけど37分もあるのでフルみたいなもんですね。お得意のジャジーな"Myrtle Avenue"、静かに不穏にうねるベースと軽快なウワモノが気持ち良い"ARP3"、Four TetのFabricliveでも使われていた"Sais"とフォルコメンハイト(完璧)な1枚。まあしかし洗練という言葉がこれ程似合う人も居ないというか、これで医学生ってんだから、エ、エアシュ・レックリッヒ(お、恐るべき)Floating Points…!とスコルピオンも仰るに違いありません。ってヘルガが言ってた。配信盤がとってもお安いので是非どうぞ。


01. The Joy Formidable / The Big Roar [Atlantic]

ロンドンを拠点とするウェールズ出身の轟音ドリームポップな3ピース、The Joy Formidableの実質デビュー作。小難しかったり狭っ苦しいインディ・ミュージックが多く感じる昨今、ポップで耳障りよいメロディと小気味よい轟音がツボりました。不穏なノイズで始まる7:44秒の大作、"The Everchanging Spectrum Of A Lie"で始まるのも只者では無い感じでよいじゃないですか。(注:日本版は曲順違うけど)

ベースRhydianの美声が聴けるキャッチーな"Austere"、ライブの定番OPナンバー"A Heavy Abacus"、そしてライブではしばしば8分を超えるドラマティックな展開を見せるベストトラック"Whirring"の流れは本作のハイライトで、私達はこういう音が好きなのよ!というRitzy Bryan嬢のドヤ顔が見える様です。ライブでRitzyが見せる、髪を振り乱しピアノを弾く様にエフェクターを弄るパフォーマンスも最高。お願い、結婚してください来日してください!!!!!!!!!1


The Joy Formidable - Whirring


一言

20位まで選んだ時はテクノ・ダブステップ系強すぎると思ったけれど、40位まで選ぶと
結構ロック系入ってきました。しかし改めてミーハー趣味だな…と再確認した次第です。
まあこのスタンスを変えるつもりはないんですけども。
2011年は地震、原発問題、ミュージシャンの相次ぐ死、等々色々ありすぎた年なので、
例年よりは明るめな音楽を聴きたい傾向があったかもしれません。

とりあえずいきなり年間ベストから始めたこのブログですが、今後は買った聴いたCD
なんかに一言添える感じで更新していく予定です。批評めいた物言いが出来ないので、
好きとか嫌いしか書きませんけどね!
 
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